色彩、幾何学、素材の融合、ソフィ・トイバーの創造力に触れて
私にとって、最も心地よく、そして刺激的な体験のひとつは、美術館や展覧会を訪れることです。
よく知っているアーティストの作品を見ることもあれば、全く知らなかった作家に出会うこともあります。そうした予期せぬ出会いこそが、美術鑑賞の面白さをさらに深めてくれるのだと感じています。
少し前になりますが、アルティゾン美術館で開催されていた「ソフィ・トイバー=アルプとジャン・アルプ展」に行く機会がありました。正直に言うと、二人のことはそれまで聞いたことがなく、展覧会の紹介文を読んで初めて彼らの存在を知りました。ソフィ・トイバー=アルプがキャリアの初期にテキスタイルデザイナーとして活動していたと知り、彼女の仕事にとても興味を持ちました。
一方、夫であるジャン・アルプは絵画、彫刻、詩といった多様な芸術活動を行っており、特に彼の詩の一節を展示の中で見つけることができればと思っていました。
ソフィの作品には、抽象的な幾何学や色彩理論への深い理解が見られます。それは絵画のみならず、テキスタイルや家具のデザインにも表れており、具象性や構成主義の要素とも融合しています。彼女の作品を見る中で、色彩やトーンの使い方、光と影を巧みに操る技法に目を奪われ、彼女の色彩感覚の鋭さに感動しました。
彼女の作品には、さまざまなスタイルや分野が融合しており、一見すると混沌や迷いのようにも感じられるかもしれません。しかし実際には、その多様性こそが彼女の創造性の源であり、ビーズから彫刻素材まで、あらゆる素材を深く理解していたことの証でもあると思います。展覧会を通して感じたのは、ソフィ・トイバー=アルプは20世紀の前衛芸術の先駆者の一人であるにも関わらず、世界的にはまだ十分に評価されていないということです。
最後に、展覧会で紹介されていた彼女の言葉を引用して締めくくりたいと思います。
「私は信じる。美しいものを創り出そうとする求は、それが真実で真摯なものである限り、完璧さをめざす努力と合致するものであると。」
展覧会はすでに終了していますが、ぜひ多くの方にこの芸術家夫婦についてもっと知っていただき、彼らの作品からインスピレーションを受けてほしいと願っています。
photo & text by agatha
アルゼンチン出身。ファッション、アート、科学に関心があり、ファッション業界を、気候変動やジェンダー平等などの社会課題に気づきをもたらす場に変えていくことを目指している。美術館や展覧会に行くこと、海を眺めること、カフェで過ごす時間が好き。
agatha
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