なんでもない日々を特別に

中学生の頃読んでいた伝記の中に、私の人生の核となっているものがあります。

「今日が人生最後の日だとしたら、私の今日の予定は本当にやりたいことだろうか。」

これは、スティーブ・ジョブズが毎朝鏡の前で言っていた習慣です。

大きな衝撃はありませんでしたが、そのとき自分の中で何かが反応し、毎日に対する意識が少し変わったように思えます。平和な日常の中で死を意識すること。自殺願望があるのではなく、死を身近に意識することで選択の連続である人生をできるだけ後悔しないように生きようと思いました。

先日、ふらっと入った美術館でmemento moriという展示を行っていて、やはり昔から同じように考える人はいたのだなと感じました。メメント・モリ「死を思え」という意味のラテン語で、日常の中で死を意識することを促す言葉でしたハンス・ホルバインは畑を耕す農民や宴会中の貴族と共に骸骨のイラストを描いています。今の平和な世の中では、死を意識するような経験も少なくなり人々はこの平和な日々が当たり前のように続くと思っていますが、事故や災害など死ぬ可能性がゼロでは決してありません。

正義があるのは悪が存在するからだと言いますが、死も同じようなものではないでしょうか。死というとなんとなく暗くて、日常に死を意識するなどというと、良くない印象を受けるかもしれませんが「日々を生きるため」「毎日を輝かせるため」の手段でもあるのです。

photo & text by サトシ

生まれも育ちも神奈川県。最近は専ら、ゴシック文化にハマっており、幼少期から育んできた厨二心が疼き出している。ロンドンに行きたいが、本当はとりあえず黙って、真っ当なバイト探しや、就活をするべきなのである。優雅に生活したいのに、去年の金遣いが荒すぎて破産寸前。

サトシ