日常。
雨。ただの雨。
土曜の午後19時、ベランダのパイプ椅子に腰を下すと肩から足先へ力が抜けていく感覚が伝わります。向かいのマンションの黄色い蛍光灯が少し雨で滲んでいるのが、日常的な景色になっていて、どことなく切なく思ってしまう自分が心の片隅にいます。東京に少しずつ慣れていってしまっている自分が、学生生活が終わる頃にはまたどのように変化していってしまうのか気になりますが、そんな答えは持ち合わせていません。
余り物の食材で作った簡単なおつまみとエステリーの香りのする飲み物を友だちがベランダまで運んでくれました。食べられる味ではありますが、その見栄えはお世辞にも美味しそうとは思えません。舌がピリピリとするのを流し込むと、喉からしょっぱさが無くなっていくこの感覚は、成人してからのささやかな楽しみなのは私だけではないでしょう。
ある程度、皿のそこが見えるようになった瞬間、残りわずかの「嗜み」を手に取り、慣れた手付きで口に運ぶと友だちもつられるように手に取りました。他愛もない話を、ただこの雨のようにいつまでも続けているのは、今となっては東京にいる私の日常になっています。
21時を過ぎ、雨が強くなるにつれ、風呂がたける音が少しぼーっとした頭を強制的に現実に引き戻しました。脱衣所に投げ捨てられた服は、それこそ濡れた枯れ葉のように力無く崩れています。電気をつけずそっと足を入れると日々の生活の疲労が少しずつ剥がれていく安堵感があります。
雨の音を聴きながら風呂場で見るお湯の湯気は、天井に届く前に暗闇の中へと吸い込まれていきました。他愛もない、ただただ心地の良い日、それは雨のせいなのか、それとも自分が大人になってしまったからなのか。感じ方は十人十色とは言いますが、そんなものは、今に始まったことではありません。
自分の安堵はこの雨と共にあります。
photo & text by Kazuya
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Kazuya
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