新宿夜カフェ

この写真は、20歳の誕生日に姉が新宿のカフェ「アナログ」に連れていってくれたときのものです。

新宿三丁目の雑居ビルの一角に、ひっそりと佇むそのお店。古びた階段を上がって扉を開けた瞬間、アンティーク家具が並ぶ、どこか懐かしくて静かな空間が広がっていて、まるで時間がゆっくり流れているように感じました。ざわついた都会の中で、こんなに落ち着ける場所があるんだなと、不思議なくらい心がすっと軽くなったのを覚えています。

この日注文したのは、チーズケーキとガトーショコラをひとつずつ。どちらもお皿の上に丁寧に盛りつけられていて、運ばれてきた瞬間に「かわいい！」と思わず声が出てしまいました。チーズケーキはしっとりなめらかで、ミントがアクセントに。ガトーショコラは甘さ控えめで濃厚、大人っぽくて、そっと添えられたバニラアイスもとてもおいしかったです。

ドリンクは、ベリーやレモンがたっぷり入ったスパークリング。グラスの中で果実が揺れてきらきらと光る様子がなんともきれいで、その1杯を前にして姉が「お誕生日おめでとう」と微笑んでくれたとき、ちょっとだけ涙が出そうになりました。照れくさくて、言葉にはうまくできなかったけれど、「ありがとう」の気持ちがとても大きかったです。2つ年上の姉は、私より少し早く東京に出てきて、今は別々に暮らしているけれど、私の誕生日にこうして時間を作ってくれたことが本当にうれしくて。普段は言えないけれど、姉の優しさには、何度も救われてきたなってあらためて思いました。

20歳という節目は、特別なようで、少し怖くもあります。“ちゃんとした大人”にならなきゃ、って焦る気持ちもあるし、まだ何が正しいのかさえわからないこともたくさん。でも、今年は「自分の気持ちで選ぶ」ことを大切にしたいと思っています。たとえ間違えたとしても、自分の言葉で、自分の足で、進んでいける人になりたいです。姉と過ごしたこの時間は、静かであたたかくて、私の背中を押してくれるような夜でした。この日の思い出が、きっとこれからの私を支えてくれる気がしています。

photo & text by 芹