バナナにダクトテープ
一時期、世界中で話題になったポップアート作品があります。マウリツィオ・カテランによる『Comedian(コメディアン)』です。白い壁に、1本のバナナがダクトテープで貼られているだけ。この作品を前にすると、「これがアートなのか」と戸惑いを覚える人も多いでしょう。しかし、その違和感こそが、この作品の狙いだと言えます。
私たちはつい、アートを普遍的で、永遠に残るものだと考えがちです。しかし、実際には絵画も彫刻も時間とともに劣化し朽ちていく存在で、修復を重ねながらかろうじて命をつないでいるにすぎません。カテランは、その事実を誰にでもわかる形で示すために、あえて「必ず腐る」バナナを作品に用いたのではないでしょうか。
『Comedian』が発表されたのは2019年のアート・バーゼル・マイアミです。会期中、展示されていたバナナが食べられるという出来事がありましたが、作品は失われませんでした。新しいバナナが貼られ、展示は続けられたのです。この出来事は、作品の価値が物そのものではなく、行為やアイデアにあることをはっきりと示しました。
バナナは腐り、交換され、姿を変えていきます。それは、絵画や彫刻が時間に抗えない存在であることの象徴でもあります。だからこそ『Comedian』は、アートが永遠であるという幻想を軽やかに裏切ります。
「これはアートなのか」という問いに明確な答えはありません。ただ、その疑問を抱いた瞬間、私たちはすでに作品と向き合っています。バナナにダクトテープという単純な構図は、アートの価値や時間との関係を静かに突きつけているのです。
photo & text by Kazuya
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Kazuya
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